むせび泣く声には、鼻にかかった音が混ざっていた。
こうなってしまっては、藤堂澄人はもう冷たい態度を貫くことなどできなかった。
特に、彼女が時折手を上げて涙を拭う仕草を見ると、藤堂澄人はもうじっとしていられなくなった。
急いで後ろから彼女を抱きしめ、声は柔らかくなっていた。「もういいよ、もういい。反省できたならそれでいい。次はこんなことしちゃダメだよ。」
九条結衣は黙って頷いた。藤堂澄人は抱きしめている体が微かに震えているのを感じた。明らかに必死で啜り泣きを堪えているようだった。
藤堂澄人の心は強く締め付けられるような痛みを感じた。怒る気など失せ、むしろなぜ彼女にあんなに厳しく当たってしまったのかと後悔していた。
「叱っているわけじゃない。ただ怖かったんだ。もし俺が少し遅れていたら、何かあったらどうするんだ?」
九条結衣はまだ何も言わなかったが、その微かな震えは藤堂澄人にはっきりと伝わっていた。
心は更に強く締め付けられた。
「もういいよ、結衣。悲しまないで。俺が悪かった。全部俺が悪い。そんなに厳しく言うべきじゃなかった。俺を叩いていいよ。好きなだけ叩いて、気が済むまで。」
返事は、また九条結衣の心を痛める沈黙だった。
藤堂澄人は焦り、抱きしめていた九条結衣を自分の方に向かせ、うつむいている顔を両手で包み込んだ。緊張していた目が、その笑みを浮かべた得意げな瞳と出会った瞬間、暗くなった。
「九条結衣!」
「ご主人様、ごめんなさい!」
彼が怒鳴る前に、九条結衣は急いで謝罪し、不意を突いて藤堂澄人の首に腕を回し、素早く彼の唇を塞いだ。
藤堂澄人の口まで出かかった叱責の言葉は、一瞬で消えた。
この困った奴!
本当に狡猾になってきている!
彼の前で泣くふりをして同情を誘うだけでなく、今度は直接手を出してきた。
こんな悪い癖はどこで覚えたんだ?
悪くなった!この困った奴は悪くなった!
藤堂澄人は心の中で奥さんが悪くなったと文句を言いながらも、体は奥さんの積極的な行動を十分に楽しんでいた。次の瞬間、主導権を奪ってキスを深めようとした。
しかし彼が続けようとする前に、九条結衣は既に先に彼から離れていた。
藤堂澄人:「……」
この困った奴!誘っておいて逃げるなんて。