761.まさか拗ねてるの?

普通の人なら、どう選ぶべきかわかっているはずだ。

しかも、彼女が当時彼に与えた報酬は、黒崎芳美が与えたものよりもずっと多かった。お金が多すぎるとは思わないはずだ。

この世界で、お金を持っていることより良いことは、もっとたくさんのお金を持っていることだ。

しかし、藤堂澄人にそう言われて、彼女も自分が確かに衝動的だったことに気づいた。

予期せぬことは、どのように起こるのか、誰にも予測できないものだ。

彼女はあまりにも当たり前のように考えすぎていた。

生活が安逸になりすぎて、頭を使うことさえ省くようになっていた。

藤堂澄人のその時の不自然な感情や、ずっと張り詰めていた怒り、そして以前彼が突然彼女の手を握りしめた時の震えを思い出した。

その時は理由がわからなかったが、今はよく分かる。