757.どこからそんな自信が出てきたの

「大丈夫?」

「大丈夫」

藤堂澄人は淡々とした目で九条結衣の顔を一瞥し、彼女の手を引いて二階から足早に立ち去った。

彼の足取りは少し速かった。普段なら彼女と一緒に歩くときは無意識に歩調を合わせていたのに、今回は違った。

九条結衣は彼が怒っているように感じた。それもかなり。

「澄人、待ちなさい!待ちなさい!」

後ろからそう遠くないところで、黒崎芳美の慌てた叫び声が聞こえた。「澄人、私はあなたのお母さんよ。あなたの奥さんにこんな扱いをさせるの?」

「澄人、待ちなさいって言ってるでしょう!澄人、こんな親不孝な息子は天罰が下るわよ。ろくな死に方できないわよ!」

黒崎芳美の呪いの言葉が遠ざかっていく。その一言一言が冷酷で骨身に染みた。九条結衣の表情が一気に冷たくなり、目に鋭い光が宿った。

あの老いぼれ女、自分が恥知らずな行為をしておきながら、実の息子にこんな毒々しい言葉を投げかける。よくも親不孝だなどと言えたものだ。

藤堂澄人に引かれていた足を突然止め、彼女は振り返って戻ろうとした。藤堂澄人は一瞬の油断で彼女を掴み損ねた。

九条結衣の足取りは速く、怒り心頭といった様子で、まだ藤堂澄人を罵り続ける黒崎芳美の前まで歩み寄った。

「澄人、お前の奥さんにこんな風に実の母親を扱わせて、お前は絶対ろくな…」

パン——

パン——

左右の頬に容赦なく平手打ちが食らわされ、黒崎芳美はすっかり呆然として、しばらく我に返れなかった。

「最初は足一本だけにしようと思ってたけど、今は違うわね…」

九条結衣は横にいる島の責任者に目を向けて言った。「両足とも潰しなさい」

「九条結衣!」

黒崎芳美は悲鳴を上げた。

もともと高橋洵は彼女のことなど気にも留めていなかった。高橋奥様という立場も高橋夕のおかげでもらえただけなのに。今、もし彼女が不具者になったら、高橋洵は間違いなく彼女を見捨てるだろう。

「九条結衣、あなた、よくも!」

「こんな状況でまだ私が手を出せないと思ってるの?」

九条結衣は目を細め、黒崎芳美の歪んだ顔に近づき、彼女の目に浮かぶ恐怖を確認してから、冷笑しながら言った。

「あなたは自分に力があると思ってるの?それとも、あなたなんて眼中にない高橋さんに力があると?」