「誰だか分かるの?」
「疑わしい対象は何人かいるが、今のところ決定的な証拠はない。だからこそ、彼らは急いで私を暗殺しようとしているんだ」
そう言いながら、何かを思い出したのか、眉間に深いしわを寄せ、九条結衣をより強く抱きしめた。
「高橋洵のことだが、最近の調査で表向きはあの連中と付き合いがないように見えて、裏では密接な関係があることが分かった。黒崎芳美が突然私に近づいてきたのも、おそらく高橋洵が関係しているんだろう」
この点について、九条結衣も考えていた。しかし、黒崎芳美があまりにも救いようのないほど愚かな性格設定であることを考えると、彼女は高橋洵に利用されていることすら気づいていないのではないかと思った。
彼が当時黒崎芳美に近づいたのは、おそらく藤堂澄人の父親である藤堂仁を狙ってのことだったのだろう。