780.藤堂奥様に危機感が芽生えた

サークル内の多くの人は、彼が井上家の援助で成功したことを知っており、井上緑と結婚した当時、彼がどれほど落ちぶれていたかも知っていた。

そのため、彼の井上緑に対する感情は複雑で、感謝しながらも憎んでいた。彼女の存在が、自分の見るに堪えない過去を絶えず思い出させるからだ。

しかし、井上緑と井上家の人々に対して冷たくすることはできなかった。一つには、井上家があってこその今の自分であり、もう一つには、彼が体面を重んじる人間だったからだ。

もし外部の人間が、彼が妻の実家で成功したのに恩を仇で返すように愛人を作り、私生児を育て、実の息子を廃人同然にしたことを知ったら、どれほど非人道的だと非難されるかわからない。

そう考えながら、彼は井上緑の手の甲を軽く叩いて、なだめるように言った：

「今はそれは置いておこう。息子を連れ帰って、まずは腕の立つ医者に診せよう。何より大事なのは、息子の怪我を治すことだ。」

他のことは置いておいても、息子が藤堂澄人に不具にされたと知られたら、陰で跡継ぎができなくなったと笑われるのは目に見えている。

井上緑もそう考えて、今の急務は息子の怪我を放置できないと思った。

この島には医者がいるが、みな藤堂澄人の配下で、治療中に手を加えないだけでもましな方だ。

「そうね、そうね、まずは息子を連れ帰りましょう。」

鈴木大輔が両親に連れ帰られた後の治療については、ここでは触れないでおこう。

一方、黒崎芳美の日々は、明らかに以前の高橋家での生活よりも厳しくなっていた。

高橋洵は、彼女が九条結衣を陥れようとして失敗し、逆に自分の娘を陥れたことを知ると、平手打ちを食らわせ、高橋家から出て行けと言った。

その断固とした様子に、黒崎芳美は大いに恐れ、すぐに膝をつき、追い出さないでくれと高橋洵に懇願した。

後に黒崎芳美が高橋洵に何を約束したのかは不明だが、それで何とか高橋家に留まることができた。

しばらくは黒崎芳美や高橋夕に関する話は聞かないだろうと思っていたが、思いがけないことに、藤堂島から戻って間もなく、高橋夕がトレンド入りした。

高橋夕と共にトレンド入りしたのは、藤堂夫婦だった。

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