彼女は無意識に自分の鼻の下を触ってみた。乾いていて、鼻血は出ていなかった。そっとため息をついた。
そんな彼女の明らかな仕草に、藤堂澄人はついに吹き出してしまった。
九条結衣の唇に軽くキスをして、「お前、本当に可愛くなってきたな」と言った。
九条結衣は彼にからかわれて、頬がさらに赤くなった。藤堂澄人の顔に浮かんだ笑みを見て、彼女は不機嫌そうに唇を曲げ、ゆっくりと彼の前に歩み寄り、優しい笑顔を浮かべた。
藤堂澄人は妻のその笑顔に一瞬うっとりとしてしまったが、次の瞬間、足の甲に激痛が走った。妻が容赦なく彼の足を踏みつけていたのだ。
「お前...」
「あなたも、本当に可愛くなってきたわね」
「……」
元旦休暇が終わると、九条結衣たちは藤堂島を離れることになった。藤堂澄人も怪我をしていたので、長く外にいるのは良くなかった。