784.脳なしには底がない

九条結衣の顔から笑顔が一瞬で凍りついた。隣にいた夏川雫も顔を曇らせた。結衣はもちろん、彼女でさえ、この義理の妹は精神病にでもかかったのではないかと思った。場所も選ばず、誰かれ構わず噛みつくなんて。

彼女が何か言おうとしたが、九条結衣に止められた。

普段なら、九条結衣はとっくに藤堂瞳を懲らしめていただろう。しかし今は、植田涼のことを考えて、あまり醜い争いは避けたかった。ここはショッピングモールで、人通りも多いのだから。

藤堂瞳が自分の面子を守る気がないとしても、せめて植田涼のためには少しは配慮したかった。

藤堂瞳を無視して、植田涼に向かって言った。「私たちは先に行くわ。ゆっくり買い物してね」

「はい、お義姉さん、お気をつけて」

植田涼は九条結衣たちのために道を開けた。