783.疲労と失望

もし本妻が怒ったら、高橋夕のような頼る人もいない「田舎」の出身では、藤堂家の若奥様に殺されるのは時間の問題だろう。この借刀殺人の手口は本当に巧妙だ。

しかも、この人は藤堂澄人に調べられることを全く心配していないようだ。どうやら...背景があるようだな。

九条結衣は興味深そうに眉を上げた。

「気にしないで、うちの島主が対処するわ」

「へぇ!最近『パパ活』を堂々とやってるじゃない、羨ましいわ」

「仕方ないわ、私が島主を頼らないと、彼が怒るから」

九条結衣は困ったように肩をすくめ、その生意気な様子に夏川雫は思わず目を白黒させた。

「これ以上イチャつくなら絶交よ」

「田中行は?彼を連れてきて一緒に私をいじめればいいじゃない」

「うるさい!」

夏川雫は手にしていたバッグを九条結衣の腕めがけて投げつけた。