黒崎芳美を見る目つきも、冷たく恐ろしいものに変わった。
黒崎芳美は高橋夕の突然の目つきの変化に驚き、出発前まで自分に優しく接していたお荷物が、なぜ突然このような険しい目つきで自分を見るのか理解できなかった。
黒崎芳美は高橋夕のその険しい目つきに不安を感じ、試すような口調で言った:
「夕、今思い出したんだけど、九条結衣のお祖父さんって、あなたの従姉妹の旦那さんのお祖父さんの小林お爺さんじゃない?今回私たちが誕生日のお祝いに行く人よ。」
「え?」
高橋夕はこの関係を聞いて、驚いた。
あの小林お爺さんが九条結衣のお祖父さん?
九条結衣が藤堂澄人の妻だと知ってから、彼女は特に九条結衣の背景を調べたが、そこまで詳しくは調べていなかった。
ただ彼女が九条グループのお嬢様で、両親が離婚していて、父親の九条政も彼女のことをあまり気にかけていないということだけ知っていた。
しかも、九条政には非常に可愛がられている私生児の娘がいるので、九条グループは絶対に九条結衣の手に渡ることはない。
つまり、九条結衣は今や藤堂家の若奥様という身分以外、何も持っていない。
後ろに九条グループという後ろ盾もない彼女に、藤堂家の若奥様になる資格なんてない。
名家の人々が最も重視するのは釣り合いのとれた家柄だ。両親が離婚して無一文の女が、どうして藤堂家の若奥様の座を独占できるというの。
だから、今、九条結衣が小林お爺さんの孫娘だと聞いて、心が大きく揺れた。
小林の両親は今は退職しているが、退職前は一流大学の教授だった。
彼らが教えた学生の多くは、今では社会の重要人物となっている。
そして彼女の従姉妹の旦那である小林翔は、小林お爺さんの唯一の孫で、中国屈指の科学者であり、誰もが尊敬する人物だ。
小林の両親には小林翔の父親という一人息子の他に、もう一人娘がいる。
もしかして小林お爺さんのこの一人娘が、九条結衣の母親なのか?
高橋夕はもともと、九条結衣は両親が離婚して父親にも見放された女で、九条家を出たら何者でもないと思っていた。一方自分は、名の知れた大音楽家の父親を後ろ盾に持っているので、どう比べても九条結衣より優位に立てると。
彼女の家族は従姉妹とそれほど親しくないが、小林お爺さんと小林翔の関係で、今回の誕生日会には多くの名士が参加するはずだ。