そのため、夫婦が骨董品店に入っていくのを見て、彼らはただ豪華絢爛な店構えを見上げ、お金のことを考えてため息をつくしかなかった。
「藤堂さん、藤堂奥様、この書は斎藤大博が晩年に残した孤本の書で、書風は重厚です。彼の行書は鎌倉時代において、その時代の書画の発展全体に影響を与えたと言えます。ご覧ください。」
店長は藤堂澄人が直接店に来るとは思っていなかった。普段は権力者や富豪に慣れているはずの彼も、この時ばかりは少し落ち着かない様子を見せていた。
「それと、この書は王羲之の手によるものです。もしお年寄りへの贈り物でしたら、こちらの藤原道長の絵画も非常に適していると思います。」
藤堂澄人は目の前に並べられた数千万円相当の古書や古画を見ながら、横を向いて九条結衣に尋ねた。