806.九条結衣に負けられない

黒崎芳美は高橋夕が九条結衣を嫉妬して顔を歪めている様子をしばらく楽しげに眺めた後、言った:

「明後日は小林お爺さんのお誕生日だから、急いで少し重みのある贈り物を選びましょう。少なくとも、九条結衣には負けられないわ」

彼女はこの厄介者に対する嫌悪感は九条結衣に対するものと同じくらい強かったが、比較すると、この厄介者が息子と結婚できれば、彼女にとってはより有利だった。

九条結衣のような女は、姑である彼女を全く眼中に入れていない。そんな女を息子の嫁にするわけにはいかなかった。

この厄介者は違う。彼女のおかげで澄人と結婚できるのだから、姑である彼女に対して無礼な態度は取れないはず。それに、高橋は娘が藤堂家に嫁げるように手助けしてくれたことを知れば、きっと彼女を見直すに違いない。

今、高橋夕は九条結衣の後ろに誰が付いているかを知った後、贈り物を選ぶ気分なんてまったくなかった。

相手はお爺さんへの贈り物として、藤堂澄人が気軽に一千万円も出してくれる。

彼女は?

自分が一生懸命ドラマの撮影で稼いだお金を使わなければならない。

比べてみると、その酸っぱさは限界を超えるほど強くなった。

彼女は今すぐにでも藤堂澄人の前に駆け寄って告白し、自分がどれほど彼を愛しているかを伝えたい衝動に駆られた。

そしてこの考えは、彼女の心の中でどんどん激しくなり、もはや止められないほどになっていた。

黒崎芳美は彼女の目の奥に宿る不気味な光を見たが、その光が何を意味するのか推し量れなかった。

しかし彼女は急いでそれを知ろうとはしなかった。とにかく、この厄介者が今対抗しようとしているのは九条結衣であって、自分ではない。

もしこの厄介者を使って九条結衣を追い払った後、この厄介者も澄人に始末されれば、それが一番いい。

今後この厄介者が高橋の側で煽ることがなくなれば、高橋家での彼女の生活はもっと快適になるはずだ。

そう考えながら、彼女はますます熱心に、しかし悟られないように高橋夕を煽り立て始めた。

高橋夕は横を向いて、ずっと責任を持ってお客様の対応をしていた店員を見て、興味なさそうにカウンターの方へ歩いていった。

赤木の棚に並べられた高価な骨董品を見ながら、小林お爺さんが書道を好むなら、端渓硯を贈るのも適切だろうと考えた。