店長ではなく店主だったら、彼はこの端渓硯を全く目利きのできない女に売りたくなかっただろう。
「はい、二百万円です。これは宋の徽宗が使用していた端渓硯で、この価格は決して高くありません」
高いか安いかに関係なく、高橋夕は、それほど親しくない老人に二百万円もの贈り物をするのは少し惜しいと感じた。
しかも、九条結衣の千万円があるので、二十万円であろうが二百万円であろうが、実際には大差ない。
店長は高橋夕の躊躇いを見抜いたが、彼女に妥協案を提示することもなく、ただこう言った:
「高橋お嬢様がご希望でしたら、お包みいたしますが」
高橋夕は眉をひそめた。購入を諦めれば面子が立たないし、かといってこれほどの金額を出すのも惜しい。
しばらくして、彼女は厚かましくも言った:
「四、五十万円くらいの商品を見せていただけませんか」
店長は一瞬驚いた様子を見せた後、意味深な笑みを浮かべて、「申し訳ございません、高橋お嬢様。当店の最も安価な商品でも百万円はいたします。武則天が身につけていた漢白玉の翡翠ネックレスですが、贈る相手が男性でしたら、ネックレスは適していないかもしれません」
高橋夕は顔を曇らせた。店長の作り笑いを見て、明らかに彼女が買えないことを嘲笑っているのだと感じた。
彼女は冷ややかな表情で店長を見つめたが、ここで事を荒立てる勇気はなかった。
これほど多くの唯一無二の骨董品、しかも古代の名士が使用したものを取り扱えるということは、相当な背景がなければできないことだ。
高橋夕も愚かではなく、誰と争うべきで誰とは争うべきでないかを理解していたので、この時は手の中の銀行カードを握りしめて黙って怒りを抑えるしかなかった。
黒崎芳美は高橋夕が十分に困惑している様子を見て、ようやくタイミングを見計らって口を開いた:「夕、この端渓硯にしましょう。もしお金が足りないなら、ママが出すわ。どちらにしても小林お爺さんへの贈り物なんだから、誰が支払っても同じことよ」
二百万円は、かつて藤堂仁の財産の大半を持ち去った黒崎芳美にとって大したことではなかった。
この時に名乗り出ることで、より寛容な人物に見えると思い、高橋夕が必ず感謝すると考えていた。
しかし高橋夕はそれを聞いて、先ほどよりも更に表情を暗くした。