812.あなたは単なる売女、全然艶やかじゃない

高橋夕は九条結衣のそんな直接的な刺々しい言葉に面目を失い、顔が一瞬歪んでしまい、思わず心の中で「この生意気な!」と罵った。

「い、いいえ、藤堂奥様、誤解なさらないで。そういう意味ではなくて、ただ先ほど驚いてしまっただけです」

「ああ、じゃあ今は落ち着きましたか?」

九条結衣は高橋夕の面子を全く立てる気がなく、さらに追及した。高橋夕にとって、それは余りにも攻撃的に聞こえた。

しかし今、彼女は九条結衣に対して自分がまだ怖がっていると答えることはできず、九条結衣を引き裂きたい衝動を抑えながら、口角の筋肉が激しく引きつった後、ようやく答えた:

「もう大丈夫です。藤堂奥様のご心配、ありがとうございます」

すると九条結衣は唇を歪めて、「お礼は不要です。私はあなたを心配しているわけではありませんから」

木村靖子、小林由香里、遠藤晶、そして目の前の高橋夕まで、九条結衣は些細なことで自分の夫に目をつける、これらの小悪魔たちにもう十分うんざりしていた。

特に一人一人が弱々しく装い、清純ぶる、そんな芝居にも飽き飽きしていた。

幸い高橋夕とは表向きの付き合いもなく、島での彼女への策略のこともあり、九条結衣は今日は優しく接する気分ではなかった。

清純ぶって、みんなに虐げられて可哀想な目に遭っているところを見せたいの?

それなら手伝ってあげましょう。

「私は単に、夫が三蔵法師の肉のように、しょっちゅう妖艶な売女に目をつけられるのが困るだけです」

「これからは高橋お嬢様、もう少し自重なさってください。こんなに大勢の前で、既婚者に連れて行かれようとするなんて、知らない人が見たら、私の目の前で私の夫と駆け落ちしようとしているのかと思われますよ」

言葉が落ちると、周りから抑えた笑い声と携帯電話でビデオを撮る音が聞こえてきた。

高橋夕は九条結衣がこれほど直接的で容赦ない物言いをするとは思いもよらず、しかも全く情けをかけることなく彼女の心中を暴露されてしまい、やっと保っていた表情が一瞬にして崩れ去った。

一方、傍らで見物人の姿勢を取っていた黒崎芳美は、九条結衣のあまりの直接さと、お荷物の高橋夕があっさりと敗北してしまったことを見て、高橋夕の戦闘力を軽蔑的に見ていた。