彼女は藤堂瞳という人物を全く評価していなかったものの、藤堂瞳がもう暴れないことを願っていた。
この世界で、植田涼のように彼女を受け入れてくれる男性は、もう二度と現れないだろう。
「若い人たちはここで話していてください。私たちは先生のところに挨拶に行ってきます」
植田の父が率先して口を開き、植田涼の母に声をかけた。
植田涼の父である植田佐之は小林お爺さんの教え子で、彼が言う先生とは小林お爺さんのことだった。
夫婦二人が離れた後、その場には四人だけが残された。
藤堂瞳は植田涼の腕に手を回したまま、無意識にその手に力を込めた。植田涼は横目で彼女を見やり、そしてすぐに視線を戻した。
「決めたのか?」
藤堂澄人は植田涼を見上げ、唐突に尋ねた。
しかし、九条結衣も、植田涼と藤堂瞳夫婦も、藤堂澄人が何を尋ねているのかは分かっていた。