829.大人しくしていれば良かったのに

さらに、彼女の芸能界でのリソースの一部は、黒崎芳美がお金を使って築き上げたものだということを、彼女だけが知っていた。

もし芳美が彼女を支援しなくなったら、最近の評判の悪さと相まって、芸能界から干されてしまうかもしれない。

そう考えると、高橋夕は急に大人しくなり、黒崎芳美と争う勇気もなくなり、ただ恨めしそうに視線を外すだけだった。

高橋洵は娘が黒崎芳美の前で面目を失ったことを知り、娘のために何か言おうと思ったが、芳美を見ると、以前のように慎重に弁解しようとする様子もなく、今は何も恐れていないことを悟り、娘のために口を開く気持ちも失せた。

ただ高橋夕に言った:「お前もだ。藤堂澄人がどんな人物か、ここがどんな場所か分かっているだろう。焦るのは分かるが、小林お爺さんの誕生祝いの席で澄人に近づくのは良くない。幸い、今日はお爺さんの誕生日だから、彼もお前をあまり恥ずかしい思いをさせなかったが、もし彼が本気で冷たくしたら、お前は今日大恥をかくところだった。」