838.龍閣の裏のオーナー

高橋夕はその少年を見つめながら、少し自慢げな口調で言った:

「私が小林お爺さんに贈ったこの端渓硯は、宋の徽宗天皇の時代のもので、天皇が使用していたものです。彼が創り出した瘦金体を書くのに使っていた硯なんです。2000万円かけて購入したものが、今は壊されてしまいましたが、あなたの言い方だと路上で1000円で10個も買える安物だというのですか?」

2000万円?

その場にいた人々は皆お金に困っていない人たちだったが、小林お爺さんとそれほど親しい関係でもない高橋夕が、2000万円もかけて端渓硯を買ったと聞いて、思わず彼女を見つめ直した。

この高橋家の娘は、なかなか気前がいいものだ。

一方、黒崎芳美は高橋夕の言葉を聞いて、少し驚いて彼女の方を見た。

高橋夕がこう言う前まで、彼女は端渓硯を贈ったとはいえ、宋の徽宗時代の普通の端渓硯だと思っていた。まさか、あの日龍閣で見かけたものだとは。