835.名前を言うのにもモタモタして

高橋夕は唇を噛んで、躊躇いながら頷いた。

「じゃあ、言ってみなさいよ。これは誰のもの?あの棚はあんな端っこにあるのに、誰がわざわざそっちに行くの?」

つまり、このネックレスの持ち主が、あの端渓硯を壊した犯人だということを、みんなに言おうとしているのだ。

実際そうで、あの棚の位置は確かに端にあり、わざわざそちらに行かない限り、あの棚に触れることはできない。

そもそも、誰がプレゼント棚のところまでわざわざ行くというの?かくれんぼでもしているの?

だから、黒崎芳美のこの言葉は明らかに誰かを示唆しているようだが、事実でもあった。

「お母さん、私...」

高橋夕は下唇を噛みながら、困ったような表情を浮かべた。小林お爺さんはその演技じみた様子を見て、我慢に我慢を重ねたが、とうとう耐えきれずに口を開いた: