842.全て買い取る

藤堂澄人が妻に言ったように、彼はお金を持て余しているのに、なぜ賴む必要があるのだろうか?

藤堂澄人は彼と細かいことを気にせず、限度額のないブラックカードを取り出して竜野健二に渡した。好きなだけ使えと。

竜野健二は遠慮なくカードを受け取り、側近に渡して言った。「これで支払え」

「かしこまりました、若様」

使用人はカードを受け取り、ポケットから小型のPOSレジを取り出し、恭しく脇に立った。

福田義仁はすでに両手を擦り合わせ、今にも飛びつきそうな様子で、もう我慢できない様子だった。

赤い絹の下に隠された極上の古美術品を想像するだけで、全身が興奮で沸き立っていた。

「福田叔父さん、どうぞ」

福田義仁は急いで最初の台の上に置かれたものを開け、一瞬息を呑んだが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「蘭亭序」という四文字が皆の目に飛び込んできた。

これは奈良時代にすでに行方不明になったと言われ、その後「蘭亭序」の真筆だと主張する孤本が多く現れたが、最終的にはすべて考古学者によって否定されていた。

どんなに精巧な模造品でも、必ず痕跡が残るものだ。

福田義仁自身も何度か模造の「蘭亭序」を鑑定したことがあり、最初の反応は竜野健二も偽物を売り始めたのかということだった。

急いで古びて少し傷んだ蘭亭序を手に取り、細かく検査し、自分の慣れた鑑定方法でもう一度確認した。最後に彼の表情が徐々に変わり、完全に信じられない状態になった。

「これは...これは真筆なのか?」

自分の腕を疑うほどだった。もしこの蘭亭序が偽物なら、この偽造技術は高すぎる!

彼は断言できた。もし自分でさえこの真贋を見分けられないのなら、考古学界、特に書画や法帖を研究する学者たちも、絶対に見分けられないだろう。

福田義仁は興奮で震えていた。蘭亭序の真筆がここにあり、竜野健二がそれを手に入れていたとは。

この若者は一体どんな手段で、こんな素晴らしい品々を手に入れたのだろう。

竜野健二は蘭亭序をどのように入手したかについて詳しく語らず、ただ「福田叔父さん、あなたの見立てでは、これはいくらの価値がありますか?」と尋ねた。

福田義仁は興奮していたものの、大きな場面を見てきた経験から、最後には冷静さを取り戻し、五千万円という価格を提示した。