841.旦那様はお金持ちすぎて使い道に困る

竜野健二が九条結衣の提案に同意すると思っていたのに、彼は手の中の扇子を弄びながら、ゆっくりと目を上げて九条結衣を見つめ、傲慢な態度で言った:

「私の店の品物は全て限定品だ。うっかり壊してしまったら二度と手に入らない。なぜ君の証明のために持ってこなければならないんだ」

九条結衣:「……」

彼女は竜野健二とは面識がないはずだし、何か確執があったわけでもないはずなのに。

なぜ竜野健二の口調からは、彼女に対して敵意が満ち溢れているように感じるのだろう?

彼女の傍らに立っていた藤堂澄人が、突然軽く笑い、竜野健二を見る目が細くなり、その中には警告の意味が隠されていた。

竜野健二の瞳孔が思わず縮んだ。何か言おうとした時、藤堂澄人が口を開いた:

「持ってきた物は全て買い取ろう。それでいいか?」

この言葉を聞いて、その場にいた人々は皆、息を呑んだ。

さすが大富豪だ。妻の面子を守るために、限定品の骨董品を即決で買うとは。

竜野健二は藤堂澄人の言葉を聞いて一瞬驚いた後、目を回しながら扇子で藤堂澄人を指さして言った:

「いいだろう。言ったな」

藤堂澄人は淡々と頷いたが、九条結衣が不賛成そうに一瞥して言った。「こんな些細なことで、無駄遣いする必要はないわ」

「無駄じゃない。偽物なら、彼に倍額で賠償させる」

藤堂澄人は冷たい視線を竜野健二に向けた。竜野健二は鼻を鳴らし、顔を背けた。

その様子は、まるでツンデレな小悪魔のようだった。

すぐに竜野健二は携帯を取り出し、部下に電話をかけた。「店で一番高価な商品を10点選んで持ってこい」

九条結衣:「……」

こいつ、この機会を利用して彼女の旦那様を騙そうとしているのか?

厚かましすぎない?

九条結衣が断ろうとした時、藤堂澄人に止められた。

彼が九条結衣の耳元に身を寄せて言った:

「心配するな。お前の旦那は使い切れないほどの金がある」

九条結衣:「……」

そんな風に金持ちぶるのは殴られても仕方ないわよ。

九条結衣は呆れた様子で彼を横目で見たが、もう止めようとはしなかった。

しばらくして、福田博士が現場に到着し、初の挨拶を済ませた後、尋ねた:「何を鉴定すればよろしいでしょうか?」