856.まだ面目を失うのが足りないのか

小林の両親は小林将暉の言葉を聞いて、賛同しながら頷いた。「そうだね。私たちは贈り物コーナーのことばかり考えていて、それを忘れていたわ。すぐに監視カメラの映像を確認してもらって」

「はい」

小林将暉が去った後、小林静香は藤堂澄人を見て言った。「澄人、警察に通報して」

「はい、お母さん」

藤堂澄人は媚びるような表情で応え、急いで携帯を取り出して警察に電話をかけ始めた。

一方、小林静香の視線は、真っ青な顔をした高橋夕の顔を一瞥した後、高橋洵に向けられ、こう言った。

「私はいつも物分かりの良い方だと思います。私の底線を踏まない限り、笑って済ませられます。でも、私の一人娘を標的にする度胸のある人がいるなら、容赦しませんよ。誹謗中傷の件については、必ず告訴します」

小林静香がこの言葉を言った時の断固とした口調に、高橋夕は心臓が震えるほど怯えた。

他の人は知らないが、彼女自身は九条結衣のネックレスの件の真相を知っていた。

トイレから出てきた時、大広間に戻る通路で拾ったものだった。

そのネックレスは、九条結衣が何度か着けているのを見たことがあったので、一目で分かった。

島での九条結衣の冷酷な策略のことと、藤堂澄人のことがあって、彼女は常に九条結衣の顔を踏みつけてやりたいと思っていた。

今回、このような絶好の機会に、しかもこれだけの有力者が集まっている場で、九条結衣の面目を完全に潰すことができると思った。

贈り物コーナーに監視カメラがないことを確認してから、こっそりと近づいて端渓硯を壊し、ネックレスをそこに投げ入れて九条結衣に罪を着せたのだ。

通路に監視カメラがあるなんて、全く考えていなかった。

監視カメラの映像が出てきたら、もう終わりだ。

その時、全員が彼女が九条結衣のネックレスを拾い、こそこそと立ち去る様子を見ることになる。それなのに九条結衣を逆恨みした。

さらに藤堂澄人が警察を呼んだので、警察に連行される様子も誰かに撮影されるだろう。九条結衣を陥れようとした件がネットに上がれば、前回の炎上と相まって、もう芸能界では生きていけなくなる。

そう考えると、高橋夕は恐怖で足がすくみ、後ろに数歩よろめいた。

高橋洵は高橋夕のこの様子を見て、娘が本当に九条結衣を陥れたのだと察した。