855.私にも親がいる

「あなたという女性は男性を追いかける手段が次々と出てくるわね。でも、その手段はちょっと邪道で、本当に軽蔑せざるを得ないわ」

小林静香の直接的な物言いに、九条結衣も高橋夕を疑っているだけで、母親ほど直接的ではなかった。

高橋夕の表情が、一瞬にして暗くなった。

彼女は九条結衣の実母が何の取り柄もない無知な女性だと思っていた。小林お爺さんという父親がいても、大したことはないと思っていた。

しかし、誰が想像しただろうか。登場するなり、全員を驚かせ、人を見る目には威圧感と威厳が満ちていた。

九条結衣というあの嫌な女が十分怖かったのに、さらに怖い人物が現れるとは思わなかった。

実は、九条結衣も母親がこれほど威圧的なオーラを放つのを見るのは初めてだった。普段会うときはいつも優しく穏やかで、とても話しやすそうな様子だった。

こんなに威厳があるとは思わなかった。

高橋夕は小林静香を見つめ、このような直接的な皮肉を聞いて、それまで得意げだった表情が、突然醜く歪んだ。

「小林さん、今はあなたの娘が理由もなく私の物を壊したんです。認めたくないのは構いませんが、どうしてその罪を私になすりつけるのですか？」

彼女は小林静香と真っ向から対立する勇気はなかった。先ほど既に一度負けていたので、今は弱々しく被害者のような振る舞いをすることでしか、同情を得て先ほどの一件を忘れてもらえないと考えた。

特に小林静香のこのような攻撃的な態度は、必ず人々の反感を買うはずだと。

小林静香の容姿は優美で柔らかな印象で、一見とても話しやすく、いじめられやすそうに見えた。

そのため、小林静香が高橋夕を鋭く非難しても、高橋夕が期待したような、小林静香が彼女をいじめているという印象は与えなかった。

小林静香は高橋夕のような人を多く見てきた。かつての木村靖子のレベルも彼女より低くはなかった。

彼女のその様子を見て、小林静香は二度見する気にもならず、九条結衣の方を向いて言った：

「結衣、あなたのネックレスをどこで無くしたか覚えている？」

彼女は先ほど小林お婆さんが聞いた質問を投げかけた。

九条結衣が答えを繰り返すと、高橋家の父娘と木村富子が揃って冷笑を浮かべた。