853.元妻VS愛人

九条政と木村富子は、当初から藤堂澄人が彼らの愛娘を刑務所に送ったことを激しく恨んでおり、それは九条結衣が唆したものだと確信していた。

今、九条結衣が公衆の面前で彼らの娘の投獄について言及したため、二人の表情は一瞬にして歪んだ。

藤堂グループが木村靖子の企業機密漏洩を大々的に告発した際、この業界のほとんどの人々は、木村靖子という女性が九条政の私生児であることを知っていた。

今、九条結衣がそれに触れたことで、周囲の人々は一層面白がって見ている様子だった。

この両親も相当な厄介者だった。

娘が刑務所に入ってからそれほど経っていないのに、何度も結婚話を持ち出し、結婚の日取りを何度も変更したが、結局結婚には至らなかった。

九条政は、周囲に意味ありげな笑みを浮かべながら自分と木村富子を見つめる多くの視線に気づき、表情は一層険しくなった。

彼は小林家で威張り散らすことはできないし、まして九条結衣というあの小娘に何かできる立場でもないことを知っていた。

お爺さんがまだここで場を取り仕切っているのだから、もしあの小娘に何かしようものなら、老人は間違いなく公衆の面前で彼の両足を折るだろう。

九条政は今は九条結衣に手出しができないことを知っており、言葉で勝負しても勝てないことを悟っていた。特に最近自分が遭遇した数々のトラブルがこの小娘と関係している可能性を考えると、彼女と正面から対立する勇気が出なかった。

「ふん!話をそらすのはやめろ。こんな言葉巧みに話題を変えたところで、お前が故意に他人の贈り物を壊したことは済まされないぞ」

九条政が話題を端渓硯が壊された件に戻すと、人々は心の中で九条政を軽蔑しながらも、再び視線を九条結衣に向けた。

九条結衣が何か言おうとした時、柔らかくも力強い声が広間の入り口から聞こえてきた——

「もちろん、そのままにはできませんね」

人々が声のする方を見ると、小林静香と、見たところ40代後半で、知的な容姿と全身から儒雅な雰囲気を漂わせる男性が外から入ってきた。

小林静香は水色の短めのチャイナドレスを着て、髪を無造作に結い上げ、白く長い首筋を見せていた。

チャイナドレスは膝上で、すらりとした脚が覗き、首には極上の翡翠をかけており、彼女の年齢の女性特有の優雅さと知性を全身から醸し出していた。