「奥さん、気を付けて。ここに段差があるよ。」
「ゆっくり歩いて、芝生が滑りやすいから。」
「奥さん、ここに小石があるよ。」
「……」
ついに、九条結衣は我慢の限界に達し、歯を食いしばって言った。「藤堂澄人、いい加減にしてよ。ただの妊娠じゃない。九条初を妊娠した時だってこんなに大げさじゃなかったわ!」
九条結衣は何気なく言っただけで、深い意味はなかった。ただ藤堂澄人に、妊娠はそれほど大げさなものではなく、ちょっとした不注意で何か起こるほど脆弱なものではないということを伝えたかっただけだった。
結局のところ、九条初の時はあれほど辛い妊娠期を乗り越えたのだから、今回の方が随分と楽で、つわりもほとんどなく、眠くなりやすい以外は何の症状もない。彼がそれほど心配する必要はないのだ。