しかも、彼女が見るところ、石川教授だけが一方的に母を好きでいるだけで、母からの反応は特に見られなかった。
だからこそ、彼女はただ静かに見守るべきで、介入すべきではなかった。
九条結衣は中庭の東屋の方を見やり、母が祖父との話をほぼ終えて、今まさに戻ってくるところだった。
最初の老人の申し訳なさそうな表情に比べ、今は明らかに喜んでいる様子で、九条結衣もほっと胸をなでおろした。
どうやら、祖父は母に説得されたようだ。
しかし結局、老人は小林家には留まらず、九条愛と共にその夜のうちにA市へ戻っていった。ただし、出発前の気分は最初ほど落ち込んでいなかった。
来客たちは次々と帰り、植田家の人々が最後に残った。
植田涼の父である植田佐之と石川誠は師弟関係にあったが、ほとんど会う機会がなかった。今回は老人の誕生日だったので、師弟二人は当然老人と長く話をすることになった。
話し込むうちに、いつの間にか遅くなっていた。
彼らが帰る頃には、すでに空は暗くなっていた。
九条結衣たちはA市へ急いで戻ることはせず、小林家に泊まることにした。
植田家の人々が帰る時、九条結衣は藤堂澄人と一緒に見送りに出た。
藤堂瞳は植田涼の離婚の話に本当に恐れをなしたのか、今日は確かに大人しく、終始余計な口出しをすることはなかった。
帰る時も、顔には疲れが残ったままだった。
今日、藤堂瞳がトイレの前で自分に言った言葉を思い出し、九条結衣は目を伏せて黙っていた。
藤堂瞳という人物は確かに骨の髄まで嫌いだったが、植田涼のことを考えると、九条結衣は二人が仲直りすることを願っていた。
小林翔夫妻と共に彼らを大門まで見送り、別れの挨拶を交わした後、小林翔夫妻は先に中へ入り、藤堂澄人と九条結衣はまだ門の外に立っていた。
藤堂澄人に対して、植田佐之夫妻はまだ少し気まずそうだった。
結局のところ、自分の息子が公の場で彼の妹に離婚を切り出したのだから、藤堂澄人が追及しようと思えば、言い訳のしようがなかった。
たとえ藤堂瞳が最近家でどれほど横暴な言動をしていようとも、彼女は命がけで植田家の子供を産んでくれたのだから。
実は、植田涼は帰ってから少し後悔していた。