871.公衆の前で離婚を切り出すべきではなかった

しかも、彼女が見るところ、石川教授だけが一方的に母を好きでいるだけで、母からの反応は特に見られなかった。

だからこそ、彼女はただ静かに見守るべきで、介入すべきではなかった。

九条結衣は中庭の東屋の方を見やり、母が祖父との話をほぼ終えて、今まさに戻ってくるところだった。

最初の老人の申し訳なさそうな表情に比べ、今は明らかに喜んでいる様子で、九条結衣もほっと胸をなでおろした。

どうやら、祖父は母に説得されたようだ。

しかし結局、老人は小林家には留まらず、九条愛と共にその夜のうちにA市へ戻っていった。ただし、出発前の気分は最初ほど落ち込んでいなかった。

来客たちは次々と帰り、植田家の人々が最後に残った。

植田涼の父である植田佐之と石川誠は師弟関係にあったが、ほとんど会う機会がなかった。今回は老人の誕生日だったので、師弟二人は当然老人と長く話をすることになった。