888.来世、二度と会わないで

山田花江が自分に話しかけてきたのを見て、九条結衣はすぐに近寄り、恭しく頭を下げて「はい、山田叔母さん」と答えた。

お婆様から聞いた話では、この山田さんは藤堂澄人と藤堂瞳の世話をするために、ハーバード大学からの招聘を断り、母親のような存在として兄妹の傍で面倒を見ていたという。

それだけでも、九条結衣は彼女に深い敬意を抱いていた。

山田花江は彼女を見つめ、力なく微笑んで言った。「澄人が私に、奥様が家で待っているから、ここの用事を済ませたら帰って一緒にいると言っていたのに……」

ここまで話すと、山田花江は言葉を詰まらせ、既に小さかった声が喉に引っかかって、もう出てこなくなった。

九条結衣はその言葉を聞いて、それまで必死に堪えていた涙が、一瞬にして目に溢れた。

彼女は下唇を噛みしめ、しばらくして制御不能なほどに込み上げてくる感情を必死に押し戻し、無理に笑顔を作って言った。

「彼はいつもこうなんです……」

私を子供のように扱って、自分で面倒を見ないと気が済まないんです。

この言葉は、心の中に押し込めたまま、どうしても口に出すことができなかった。

山田花江は重傷を負っていたため長話は避けるべきで、九条結衣と藤堂お婆様も病室にはあまり長居せずに退室した。

藤堂澄人の失踪が最も直接的な影響を与えたのは、藤堂グループの株価だった。藤堂澄人が水没して行方不明になったというニュースが広まれば、藤堂グループの株価は必ず暴落するだろう。

そのため、九条結衣は真っ先に水没した人物が藤堂澄人だという情報を封鎖し、今のところ、藤堂グループの社長が事故で行方不明になったという情報は一切漏れていなかった。

今、藤堂澄人が行方不明の中、九条結衣は自分が混乱してはいけないことを知っていた。もし彼女までもが混乱すれば、藤堂グループは本当に終わってしまう。

さらに数日間の捜索作業が続いたが、依然として藤堂澄人の行方は分からなかった。

高架橋下の海域はマサチューセッツ湾の支流の一つで、早急に藤堂澄人の行方を突き止めなければ、もし彼の体が湾口に流され、さらには大西洋まで流されてしまったら、その広大な海域で一人を探すのは更に困難になる。

たとえ見つかったとしても、その時生存している可能性はどれほどあるのか?