890.財産は全て彼女の名義

九条結衣は松本裕司の言うことが正しいと分かっていた。

かつて、藤堂澄人の父親である藤堂仁が事故に遭った後、同じようなことが起きていた。

もし藤堂お婆様が即断即決で藤堂グループの混乱を収拾し、状況を安定させなかったら、おそらく藤堂グループは既に藤堂の名を失っていただろう。

現在の藤堂グループの影響力からすれば、誰が手に入れても大きな利益を得られるため、株主たちがこんな大きな利権を見過ごすはずがない。

今や、藤堂グループの取締役会のメンバーは誰もが落ち着かない状態で、誰が最終的に手に入れるかが注目されている。

「でも私は藤堂グループのことをよく知らないし、株式も持っていません。行ったとしても、彼らには私を追い出す十分な理由があります」

普段なら藤堂澄人が押さえていたため、彼らは露骨な態度を見せなかったが、今や藤堂澄人に何かあった以上、彼らは社長夫人である私に顔向けなどしないだろう。