しかし、藤堂澄人が藤堂グループの株式の50パーセントを握っているため、これらの人々が市場や他の株主の株式をすべて買い取ろうとしても、せいぜい九条結衣の持ち株と同等になるだけだった。
だから、藤堂家からこれほど大きな藤堂グループを飲み込もうとしても、実際にはその力はなかった。
今回の藤堂グループの株価暴落に乗じて、取締役会のメンバーに強制的な資金調達を働きかけ、藤堂澄人の持ち株を希薄化させようとする者もいた。
一旦藤堂澄人の株式が減少すれば、彼らは資金調達会社から株式を買い戻し、それによって少しずつ藤堂グループを飲み込むことができる。
彼らがそれほど自信を持っているのは、藤堂澄人が生還する可能性がないと確信しているからだ。藤堂家には今や七、八十歳のお婆様と、九条家出身の妻である九条結衣しかいない。
九条結衣の関係で、藤堂澄人と義父の九条政との関係は良くなかった。九条政は娘を助けるどころか、むしろこの機会に乗じて介入し、藤堂グループを飲み込もうとするかもしれない。
九条結衣自身については、誠和建材産業の取締役会長だと聞いているが、それも母親が着実に築き上げたものであり、宮崎裕司をCEOとして経営を任せているため、彼女自身は何もする必要がない。
だから、一人の女性に何ができるというのか。ビジネス界で何十年も戦ってきた彼らと戦えるはずがない。
取締役会のメンバーは皆そう考えており、株主総会で会長が不在のまま、藤堂グループの強制的な資金調達について決議しようとしていた。
藤堂グループ、最上階の会議室。
「現在、藤堂社長の生死が不明で、藤堂グループの株価は暴落し、いつ上場廃止になるかわからない状況です。今は金融会社から資金を調達して、藤堂グループの状況を安定させるしかありません。そのため、私は資金調達に賛成票を投じます。」
話をしたのは田中真斗で、藤堂グループの古参だった。かつて藤堂仁が生きていた頃から、藤堂グループでかなりの株式を保有していた。
その後、藤堂仁が事故に遭い、彼は同じような方法で藤堂グループを手に入れようとしたが、力不足で、藤堂お婆様に阻止された。
今では、彼の目には、お婆様にはもう彼と戦う気力がないように映り、藤堂澄人の妻に関しては、温室育ちの花に過ぎず、どんな手も打てないだろうと考えていた。