「だから、この間ずっと藤堂澄人の死亡が正式に宣告されるのを待っていたの?彼の遺産を相続するために戻ってきたの?」
九条結衣は心の中で抑えきれない怒りを押さえつけながら、冷たい目で黒崎芳美を見つめた。
九条結衣だけでなく、夏川雫でさえも黒崎芳美の今の興奮した反応の理由が分かっていた。
この世界に、息子の遺産を相続するために息子の死を願う、そんな母親が本当にいるなんて信じられなかった。
黒崎芳美は九条結衣にそう問われ、目に後ろめたさが浮かんだ。
あまりにも明らかで隠しようがなかったため、九条結衣は瞬時に怒りが頭に上り、手を上げて黒崎芳美の顔に平手打ちを食らわせた。
木村富子が単に人として下劣で口が悪いだけだとすれば、黒崎芳美と比べれば、木村富子の方がまだましだった。
少なくとも、木村富子は木村靖子のために彼女の前で頭を下げることができ、母親らしさがあった。
でも黒崎芳美という女は、その心があまりにも黒く、獣さえも飲み込めるほどで、お金のために息子の死を願うなんて。
九条結衣は黒崎芳美に怒りで体が震え、顔も青ざめていた。
「こんなに恥知らずで人間失格な母親を見たことがないわ。自分の息子の死を願うなんて、あなたはまだ人間なの?黒崎芳美?」
ここはショッピングモールの入り口で、多くの人が行き交っていた。
彼らの多くは九条結衣を認識し、高橋夕と高橋奥様も認識していたが、この高橋奥様が藤堂澄人の妻とどういう関係なのかは分からなかった。
しかし、九条結衣の言葉に、人々は思わず深く考えさせられた。
自分の息子の死を願うとはどういうことか?
もしかして...この高橋奥様は藤堂澄人の実母なのか?
多くの人が素早く反応し、九条結衣の言葉と最近の藤堂澄人の行方不明のニュースを合わせて、少し考えただけで理解した。
うわっ!大スクープだ!
高橋洵の妻は藤堂澄人の実母だ!
そう考えると、藤堂澄人と黒崎芳美の顔を比べてみると、この二人がこんなにも似ていることに気付いた。
黒崎芳美は九条結衣がこれほど大きな行動に出るとは思っておらず、全く準備もないまま打たれて呆然としていた。
そして彼女と藤堂澄人の関係は、彼女が最も公衆に知られたくないことだった。