899.彼女の心は鉄でできているのか

彼女が最も無力で、最も助けを必要としていた時、そばにいて心配してくれ、慰めてくれる人がいた。

この頃、九条結衣はとても辛い日々を過ごしていた。周りの人に心配をかけたくないため、いつも笑顔を装っていた。

顔の疲れは化粧で隠すしかなく、誰にも気付かれたくなかった。

毎晩眠れず、目を閉じると藤堂澄人が橋から海に落ちていく光景が頭から離れなかった。

その胸が引き裂かれるような痛みは、静かな夜にさらに増幅され、もう眠ることすら怖くなった。

大奥様の容態は日に日に悪化していった。見舞いに行くたびに笑顔を装い、病状に影響が出ないよう気を遣った。

大奥様の症状は心の病が大きかった。藤堂澄人が生きて帰ってこない限り、大奥様もすぐに持ちこたえられなくなるのではないかと心配だった。

しばらく沈黙した後、彼女は夏川雫に微笑んで言った。「そう言ってくれてありがとう」