「奥様、社長が見つかりました。」
パタッ——
九条結衣の手から携帯電話が落ちた。
彼女は急いで身を屈めて電話を拾い上げた。まだ彼女が口を開く前に、松本裕司の興奮を抑えた喜びの声が電話の向こうから聞こえてきた。「社長はまだ生きています。」
彼女は携帯電話を握る手が、激動する感情を抑えようとして更に激しく震えていた。最後には、どうやって自分の声を取り戻したのかさえわからなかった。
「彼は...まだ生きているの?」
いつの間にか涙が彼女の目から溢れ出し、服を濡らしていた。
ついに、彼女は彼を待ち続けた甲斐があった。
アメリカ、ボストン——
RLホスピタル。
「状態はどうですか?」
山田花江は車椅子に座り、医師が病床で意識不明の藤堂澄人を診察するのを見つめながら、目に隠しきれない緊張を浮かべていた。