928.山田花江に問題なし

結局のところ、それまでは彼がまだ生きているという希望を抱いていたとしても、実際には自分が自己欺瞞に陥っていることを知っていた。

松本裕司の方の進捗は九条結衣の予想よりも早く、一週間後には山田花江のアメリカでの生活について、ほぼすべてが調査済みとなった。

「奥様、調べられる限りの情報はここにあります。」

松本裕司は手元の資料を九条結衣に渡し、恭しく傍らに立った。

九条結衣は受け取った分厚い書類の束を全て読み終えるのに、すでに30分が経過していた。

「これだけ？」

九条結衣は眉をひそめて尋ねた。

「はい、これが全てです。」

九条結衣は唇を引き締め、目の前の資料を見つめたまま黙っていた。

調査結果によると、山田花江のここ数年の行動はごく普通で、基本的に家か学校にいて、時々旅行に出かける程度だった。

毎年一定期間、藤堂澄人と会っており、生活は非常にシンプルで規則正しかった。

交友関係も極めて単純で、基本的にはハーバードの教授たちだけで、他には誰もいなかった。

「あなたが雇った人は信頼できるの？」

「それは...」

松本裕司はすぐには答えられず、「奥様、私が雇った人は以前の学生時代の同級生で、今は私立探偵事務所を経営しています。」

「どう言えばいいでしょうか、奥様が山田さんを疑っているように、もし山田さんに本当に問題があるなら、たとえ社長が記憶喪失でなくても、山田さんに問題がないと断言したとしても、結局は問題が出てくるはずです。」

九条結衣は頷き、松本裕司の言わんとすることを理解した。

人を見ても心は見えない、最も信頼している人に裏切られることが最も予期せぬことだからこそ怖いのだ。

だから今、松本裕司にこの人が信頼できるかどうかを聞いても、実際には意味がない。

「奥様、私の見る限りでは、彼は信頼できる人間です。」

松本裕司は鼻梁の眼鏡を押し上げながら、そう答えた。

「私の考えすぎだったのかしら？」

九条結衣は伏し目がちに、そうつぶやいた。

松本裕司は彼女を一瞥し、躊躇いながら口を開いた：