藤堂澄人は頷きながら微笑んで、「ええ、必要な判断力は持っていますよ」と答えた。
山田花江は病室に長居せず、藤堂澄人と少し話をした後、帰ると言い出した。
山田花江を見送った後、藤堂澄人はドアを閉め、ソファに座り、まだテーブルの傍に厳しい表情で立っている九条結衣を見上げ、考えてから尋ねた:
「山田叔母さんのことを疑っているのか?」
その言葉を聞いて、九条結衣は急いで彼を見上げた。先ほど、彼女が山田花江を疑うような目つきをしていたのを藤堂澄人に見られたと感じていたが、彼が山田花江の前で何も言わなかったので、気づいていなかったと思っていた。
しかし、今藤堂澄人がこのように尋ねてきたということは、明らかに先ほど見られていたのだ。
九条結衣は眉をしかめ、藤堂澄人の顔を見つめたまま、何も言わなかった。
彼女は山田花江が知ったところで自分に何かするとは思っていなかった。
もし山田花江を誤解していたのなら、彼女の許しを得る方法を考えればいい。
問題は山田花江という人物が単純ではなく、主人が彼女をこれほど信頼していることだ。もし彼が山田花江に自分が彼女を疑っていることを話せば、山田花江が警戒心を持ち、多くの調査が非常に困難になるだろう。
藤堂澄人は彼女が黙って暗い表情をしているのを見て、彼女の考えていることを察したようで、本能的に彼女を不安にさせたくないと思い、言った:
「心配するな。山田叔母さんには言わないよ」
藤堂澄人のこの言葉に、九条結衣の目に驚きの色が浮かんだ。
すると藤堂澄人は続けて言った:「今の僕は何も覚えていないから、誰も簡単には信用できないんだ」
九条結衣:「……」
くそったれ!
わざとではないとわかっていても、九条結衣は心の中で思わず罵った。
大きなお腹を抱えて、毎日毎晩彼の帰りを待ち、苦労して会社の悪意ある輩をすべて抑え込み、なんとか藤堂グループを安定させ、やっと彼が戻ってきたというのに、何も覚えていないの一言で終わりなの?
いいわ、今は私のことを覚えていないのね、許してあげる。
でも記憶が戻ったら、簡単には許してあげないからね。
九条結衣は心の中で怒りながら自分を慰め、藤堂澄人の深い目鼻立ちを見つめた。今回の出来事で痩せて、より一層輪郭がはっきりしていて、思わず心配になった。