病室はとても広く、この一室だけでも百平方メートル以上あったため、山田花江が車椅子を押して入ってきても、決して窮屈には感じられなかった。
「調子はどう?良くなった?誰か思い出せた?」
九条結衣は山田花江を疑っていたため、彼女に見られない角度から、さりげなく観察し、表情から何か普段と違うものを読み取ろうとしていた。
しかし、最初から最後まで、彼女が見た山田花江は、藤堂澄人を深く気遣う母親そのものの姿だった。
彼女が疑り深いわけではない。ただ山田花江の演技が上手すぎて、少しの綻びも見せないだけなのだ。
藤堂澄人は山田花江を見つめながら、木村靖子に対する見知らぬような冷淡さとは対照的に、なぜか鮮明に記憶に残っているこの山田叔母さんに対しては、本当に親しみと敬意を感じていた。