病室はとても広く、この一室だけでも百平方メートル以上あったため、山田花江が車椅子を押して入ってきても、決して窮屈には感じられなかった。
「調子はどう?良くなった?誰か思い出せた?」
九条結衣は山田花江を疑っていたため、彼女に見られない角度から、さりげなく観察し、表情から何か普段と違うものを読み取ろうとしていた。
しかし、最初から最後まで、彼女が見た山田花江は、藤堂澄人を深く気遣う母親そのものの姿だった。
彼女が疑り深いわけではない。ただ山田花江の演技が上手すぎて、少しの綻びも見せないだけなのだ。
藤堂澄人は山田花江を見つめながら、木村靖子に対する見知らぬような冷淡さとは対照的に、なぜか鮮明に記憶に残っているこの山田叔母さんに対しては、本当に親しみと敬意を感じていた。
山田花江にそう聞かれ、彼は首を振り、ため息をつきながら正直に答えた。「いいえ」
そう言いながら、無意識に九条結衣の方を見やった。まるで自分の答えで彼女が怒ったり失望したりするのを恐れているかのように、何となく不安な気持ちを抱えていた。
九条結衣はこの時、山田花江を観察することに夢中で、山田花江と話している藤堂澄人が突然彼女の方を見るとは思っていなかった。彼女の山田花江に対する疑いの表情が、すべて藤堂澄人の目に入ってしまった。
九条結衣は一瞬固まり、藤堂澄人も一瞬動きを止めた。
なぜなら、彼は確かに九条結衣が山田花江を見つめる疑いに満ちた眼差しを目撃したからだ。
彼女は...山田叔母さんを疑っているのか?
藤堂澄人は眉をかすかにしかめ、心の中で何とも言えない感情が湧き上がった。
なぜ木村靖子と山田叔母さんだけを覚えているのか、自分でもわからなかった。木村靖子に対しては特別な感情はないが、山田叔母さんは違った。彼女からは親しみと安心感を感じた。
まるで迷子になった子供が、最も不安で途方に暮れているときに、突然大人が現れて、守ってあげると言い、家に連れて帰ってくれると約束してくれたときのように、すべての安心感が戻ってくるような感覚だった。
そして今、山田花江は彼にとって、まさにその子供を家に連れ帰り、守ると約束してくれた大人のような存在だった。
九条結衣については...