955.終わりまで一緒にいると約束した

仕事に集中させることで、時間とともに何かを思い出すかもしれない。

藤堂澄人も今は怠ける時ではないことを知っていた。どうせ奥さんはここにいるし、どこにも行かないのだから。

今は、やるべきことが山積みだ。最も重要なのは、これら全ての背後で誰が糸を引いているのかということだ。

「仕事に行ってくるから、ここで待っていて」

「子供じゃないでしょう?仕事に付き添いが必要なの?」

九条結衣は呆れ気味に言った。

この甘えん坊な性格は、記憶喪失になる前と全く同じだ。

九条結衣の目には、思わず笑みが浮かんだ。

今、唯一の慰めは、彼が生きて帰ってきたこと。そして、彼女のことを忘れていても、依然として彼女を愛しているということ。それだけで十分だった。

口では藤堂澄人の甘えっぷりに文句を言いながらも、彼女は付き添うことを承諾した。