このような認識により、木村靖子は徐々に興奮し始め、頬まで薄く赤く染まってきた。
しかし、すぐに違和感に気づいた。
彼が記憶を失っているのなら、どうして彼女のことを覚えているのか、どうして自ら刑務所まで来て彼女を連れ出したのか。
九条結衣のような嫌な女が、彼にこのことを話すはずがない。
それに、九条結衣が話したとしても、きっと彼女のことを悪く言いふらすだけで、どうして澄人が彼女を出所させるだろうか?
木村靖子には理解できず、疑問を口にした。
「澄人さん、じゃあ...どうして私のことを覚えているの?」
藤堂澄人は隠さずに、直接答えた:
「昏睡状態の時、脳裏に常にある場面が浮かんでいた。9年前の陥れられた事件のことだ。」
彼がそのことを口にすると、木村靖子の表情が、かすかに変化した。