この投資会社は資金提供だけで、他のことには一切関与しないというのは、多くの人が夢見るような話で、こんな規定を望むはずがないでしょう。
田中真斗は元々、九条結衣の悪口を言うか、彼女を擁護する藤堂澄人を困らせようとする株主たちと約束していたのですが、今や藤堂澄人に問い詰められ、頭を垂れるばかりでした。
その場で焦り始め、慌てて口を開きました:
「藤堂社長、私たちはそのことを心配しているわけではありません。私たちが思うに……」
彼は一瞬言葉を切り、不安げな目で藤堂澄人を見つめ、表情には何か言いにくそうな様子が浮かんでいましたが、それでも続けました:
「その会社は藤堂奥様と関係があるのではないかと疑っています。」
それを聞いて、藤堂澄人は笑みを浮かべましたが、よく見ると、その目の奥には笑いの色がありませんでした。
明らかに、田中がこのように直接九条結衣を疑うような発言をしたことで、藤堂澄人の怒りを買ってしまったのです。
周囲に急激に漂い始めた冷気を感じ取り、松本裕司は思わず藤堂澄人の方を見やりました。案の定、自分のボスの笑顔は怒っているときよりも恐ろしいものでした。
人というのは、記憶を失っても、妻を守ろうとする心は少しも変わらないものですね。
記憶喪失前の、プライドが高くて素直になれなかった社長よりも、ずっと感情知能が高くなっています。
松本裕司は心の中で自分のボスに親指を立てました。
「仮に関係があったとして、それがどうしたというのですか?彼女のどの行動が規則に反していますか?」
藤堂澄人は田中の目をまっすぐ見つめ、その威圧的な視線に、田中は本能的に瞳孔を縮ませました。
「たとえその会社が私の妻のものだとしても、彼女は藤堂グループに実際の資金を投資しているのです。あなたに何の関係があるというのですか?それとも……」
彼は目を細め、田中の心虚な目を捉えて言いました:
「それとも、投資会社は必ず田中会長と提携しているか、あるいは直接田中会長の背後にある会社でなければならないとでも?」
藤堂澄人のこの言葉に、田中は驚いて急に席から立ち上がりました。「藤堂社長、そんな言い方は意味がありません。私は……」