981.自ら妾になりたがる

「本当に大丈夫なの?」

彼女は自分が無駄な質問をしたと感じた。九条結衣はあれほど藤堂澄人を愛していたのに、彼が他の女性と関係を持っているのを見て、しかもその女性は私生児だった。誰がそんな状況で平気でいられるだろうか。

九条結衣は夏川雫の目に浮かぶ心配そうな表情を見て、彼女に話すべきか迷っていた。しかし、口を開く前に、店の入り口から木村母娘が入ってくるのが見えた。

木村富子は前回のショッピングモールで九条結衣に殴られただけでなく、彼女の友達のあの嫌な女にも強く蹴られた。帰ってからずっとその憤りが収まらず、本当に裁判所に訴えを起こしたのだ。

しかし、弁護士によると、彼女の体には怪我の痕跡がなく、九条結衣たちが暴力を振るった映像証拠も目撃者もいないため、訴えても勝てる保証はなく、時間の無駄になる可能性が高いとのことだった。

木村富子はその憤りを飲み込めなかった。何度も九条結衣という嫌な女に屈辱を味わわされたのに、仕返しする方法がなかった。

九条結衣に対して、彼女はずっとこの憤りを飲み込めなかった。今回、藤堂澄人が記憶を失い、偶然にも靖子のことだけを覚えていて、九条結衣のことを忘れているなんて、まるで天も這女の横暴を見過ごせなくなったかのようだった。

母娘は九条結衣に対して本能的に怯えを感じていたが、考え直してみれば、この女はもうすぐ藤堂家の離縁者になるのだから、怖がる必要などないと思った。

木村母娘が突然背筋を伸ばした様子が明らかに見て取れた。明らかに後ろ盾ができたと感じているようだった。

夏川雫は不安そうに横目で九条結衣を見た。

夏川雫:「……」

隣で九条結衣が全く悲しみや苦しみの様子もなく服を選んでいるのを見て、夏川雫はもう何も言えなくなった。

彼女には、この親友が本当に大丈夫なのか、それとも大きなショックを受けすぎて異常なほど冷静になっているのか、もう区別がつかなくなっていた。

夏川雫がどう考えているかに関係なく、木村靖子の考えは自然と後者の可能性に至った。

九条結衣が藤堂澄人に直接牢屋から迎えに来られたことで、大きなショックを受けたのだと考えた。

極端から極端へという道理を、木村靖子も知っていた。

九条結衣のこの様子は、明らかにショックが大きすぎて、だからこそこんなに平静を装っているのだと。