999.島主は20キロの痩せっぽちのように不満げだった

お爺さんは彼女のそのような様子を見て、心が慰められ、それ以上は何も言わず、ただこう言った:

「何か爺さんの助けが必要なことがあれば、爺さんに言いなさい。」

「はい、ありがとうございます、お爺さん。」

お爺さんと話を終えた後、九条結衣は書斎を出て、息子の部屋へ向かった。

息子に申し訳ない気持ちがあったので、九条結衣は九条初と十時過ぎまで一緒に過ごし、息子が寝てから仕事を続けるために部屋に戻った。

ドアを閉めた瞬間、窗の外から誰かが素早く飛び込んでくるのを目の端で感じた。

彼女の目の奥に、一瞬冷たい光が走った。

ドアノブに置いた手でドアを開けようとした時、突然腰に力が加わり、後ろから抱きしめられた。

「出て行くな!」

九条結衣の体が一瞬硬直し、目を大きく見開き、その瞳には隠しきれない驚きが浮かんでいた。

「どうしてここに!」

目の前の見慣れた、笑みを帯びた端正な顔を見て、九条結衣は目に浮かぶ驚きを抑えながら、小声で尋ねた。

来た人は他でもない、昼間にショッピングモールで三歳児のことで大喧嘩をした藤堂澄人だった。

藤堂澄人の両手は、まだ彼女の腰に巻き付いていて、彼女の質問を聞くと、さらに近づいてきて、顔には少し不満げな表情を浮かべた。

「何日も家に帰って来ないから、君が恋しくて辛くて、こっそり来たんだ。」

九条結衣は彼の腰に巻かれたクライミングハーネスを見て、そして開け放たれた窓を見て、口角が激しく引きつった。

「泥棒になったの?」

「正面玄関から入れてくれないんだから、泥棒になる以外どうすればいいんだ?」

藤堂澄人は考えれば考えるほど不満になり、あのとんでもない甘い誘惑に屈服するんじゃなかった、今では妻がいても一緒に寝られないなんて。

その言葉に漂う淡い恨みを聞いて、九条結衣は再び口角を上げた。

手で彼の顔を包み、何度も強く撫で、そして唇にキスをして、慰めの意を示した。

「もう少し待って、今は木村靖子の方からしか手を付けられないの。」

奥様に撫でられてキスされた後、藤堂島主の心の不満は、かなり和らいだ。

「色仕掛けで苦労してるのは僕の方なのに……」

藤堂島主は20キロの痩せっぽちのように不満げだった。