1001.あなただけに軟飯を食わせる

もしあの調査員に問題がなかったり、山田花江に問題がなかったりしたら、わざわざ結衣の調査のことを山田花江に話しに行くはずがない。

明らかに、山田花江は彼を...あるいは結衣をずっと前から狙っていたのだ。

藤堂澄人の表情は、良くなかった。

これまで、彼はうっすらと山田花江とは関係ないことを、彼らが考えすぎているだけだと期待していた。

結局のところ、あの女性は彼が記憶喪失になる前は、彼が本当に大切にしていた人だった。

今では、記憶喪失前ほどの強い感情はないものの、心の中にはやはり残念さと、裏切られた怒りがあった。

九条結衣は彼の表情がおかしいのを見て、彼の側に歩み寄り、慰めた:

「辛く思わないで、早く気づけてよかったわ。もし私たちが一生彼女に問題があることに気づかず、彼女に振り回されていたら、それこそ怖いことだったわ」