君の元カレは、こんな姿を見たことがあるのか?

神崎卓礼は熱い息を吐きながら、かすれた声で言った。「君は自分のことを大きく勘違いしているようだな。」

こんな彼女は、まさに極上の美女で、誰だって、目を奪われずにはいられない。

彼女の元カレこそ、まったくの馬鹿だ。これほどの女を捨てて、あの猫をかぶった道乃琪に夢中になるなんて。

ふと、彼は一つの疑問が浮かび、視線を深くした。「君の元カレは、こんな姿を見たことがあるのか?」

え?

道乃漫は一瞬、思考がついていかず、神崎卓礼の唐突な問いに固まった。考える暇もなく、つい本音が口から漏れた。「ないです。」

彼女の体さえ見たことがなく、ましてやそれ以上の関係なんてなかった。

神崎卓礼は満足そうに唇の端を持ち上げると、ぐっと身を寄せて彼女の唇を奪った。

道乃漫は驚いて目を見開いた。押し返そうとしたが、手首はいつの間にか後ろに回され、彼に触れることすらできなかった。

口の中は彼の息で満たされ、熱さとミントの清涼感が矛盾するように絡み合い、矛盾した感覚が脳を焦がすように広がっていく。

彼が離れた時、道乃漫は胸を激しく上下させながら呼吸し、彼の胸に密着したまま、肌と肌が触れ合う接触に、道乃漫は完全に平常心を失い、クリームのように滑らかな肌は、うっすらと桃色に染まっていた。

神崎卓礼の黒い瞳も霞んだ光を帯び、彼女を頭からつま先まで見つめ続け、どれだけ見ても飽きる気配はなかった。

先ほど警察の前で、彼女は彼にキスをしたが、それは唇を重ねただけで、それ以上深まることはなかった。

それでも、あの柔らかくて甘い感触は今も鮮明で、忘れようにも忘れられなかった。

ただ、彼女が離れるのが早すぎて、味わう間もなく終わってしまった。

だからこそ、今度はじっくりと味わってみたら、本当に素晴らしい味だった。想像以上だった。

「俺を利用する時は裸で抱きついてきて、用が済んだら手のひら返しってか」神崎卓礼は皮肉げに笑う。「俺のこと、何だと思ってる?そんなに甘い相手じゃないぞ」

道乃漫は心の中で、脱がされたのは自分の方だと文句を言いたかったが、もし本当に利用しやすい相手なら、今こうして抱きしめられて逃げられないはずがない。

道乃漫は彼を挑発する勇気などなかった。特に今のような状況では。

すぐさま営業スマイルを浮かべ、媚びるように言った。「神崎若様、私みたいな小者に怒るなんて、勿体ないですわ。誰もが知ってますよ?あなたは神崎創映の社長で、神崎創映は芸能界の帝王。あなたが足を一つ踏み鳴らせば、この国の芸能界は震えます。私が利用できるわけないじゃないですか?」

それに、神崎家は戦国七雄の邪馬台国の血を引き、何世代にも渡って続く本物の貴族。由緒正しい名家だ。実際のところ、神崎卓礼は貴族で、現代で自称貴族と名乗る者たちとは比べものにならないほど格が上で、実質的に弥生时代の末裔なのだ!

その深い歴史は計り知れず、八大名家の各家に伝わる収蔵品は、弥生时代から受け継がれてきたもので、文献から骨董品まで及ぶ。

価値で言えば、博物館をはるかに超えるものだ!

実際、現在博物館で展示されているものの多くは、彼らの家から借り出されたものだった。

そして神崎創映は、芸能界の頂点に君臨する絶対的存在。他のすべての芸能会社が団結しても、神崎創映には太刀打ちできない。

神崎創映は一つの王朝であり、神崎卓礼はその王朝の天皇なのだ!

道乃漫は取り入るような崇拝の表情を浮かべたが、神崎卓礼は嘲笑うように信じない様子を見せた。

この女は狡猾すぎる。彼は先ほどそれを目の当たりにしたばかりだった。

彼は眉を上げて尋ねた。「隣で起きた件、あれは一体どういうことだ?」

彼は隣に映画監督が住んでいることを知っていた。現在国内でトップ10に入る監督で、製作した映画は評判も興行収入も悪くなかった。