今見下ろすと、神崎卓礼の手はいつの間にか……

彼がここにいると知って、その監督は昼間にわざわざ会いに来たそうだ。

道乃漫はまたもや思考が追いつかず、神崎卓礼の唐突な話題転換に一瞬ぽかんとしてしまった。

「道乃琪はその監督の新作でヒロインの座を狙って、部屋で会う約束をしていたの。監督の意図は明らかだったのに、土壇場で私を代わりに行かせようとして。私が拒否したら揉み合いになって、彼女に電気スタンドで殴られて気絶したの。監督も彼女に誤って怪我させられたのよ。」道乃漫は簡潔に説明した。

「なるほど。」神崎卓礼は頷いた。

道乃漫は驚いた。彼の瞳には、一切の疑念がなかったのだ。

彼は本当に彼女を信じているのだ。

「私を信じてくれるの?」道乃漫は驚いて尋ねた。

「なぜ信じないんだ?」神崎卓礼はまるで当然のことのように、逆に不思議そうな顔をして返してきた。

「どうして?」道乃漫は今自分が彼に抱かれていることも忘れ、彼に信頼されていることの衝撃だけが残っていた。

二人はまだ他人同士で、今日初めて会ったばかりなのに、彼は何も知らないはずなのに、こうして彼女を信じている。

かつては、実の父親さえも彼女を信じなかったのに。

なのに初対面の神崎卓礼は、躊躇なく彼女を信じているのだ!

「理由なんてない。お前が本当のことを言っているって分かるだけだ。」神崎卓礼は言った。

これは説明のしようがない、彼の当主の能力によるものだった。

八大名家にはそれぞれ当主特有の能力があり、次期当主は当主能力に目覚めた者が選ばれる。

各世代、当主能力に目覚めるのはたった一人だけだ。

だから、一度目覚めれば、その者が必然的に次世代の当主となる。

そして神崎卓礼の当主としての能力は、嘘を見分けることができるというものだった。

誰かが彼の前で話すとき、本能的にそれが真実か嘘かが分かるのだ。相手の心を読めるわけではなく、ただ単純に相手が話すときに、それを見分けることができるだけだ。

八大名家の各世代の当主の当主能力を知る者は少なく、信頼する者にしか明かさず、むやみに外に漏らすことはない。

さもなければ、特殊能力も致命的な弱点となってしまう。

悪意ある者に利用されたり、対策を練られたりする可能性があるからだ。

道乃漫の目が熱くなった。二度の人生を通して、母を除けば、誰からもこんなふうに信じられたことはなかった。

両親が離婚して夏川清翔が道乃家に入って以来、彼女には父親がいないも同然だった。

道乃啓元は二度と彼女の言葉を信じなくなり、夏川清翔が何を言おうと、道乃琪が何を言おうと、すべて信じた。

いじめられていたのは彼女なのに、陥れられていたのも彼女なのに、道乃啓元は一度も信じてくれず、叱責し、罰を与え、道乃琪を見習えと言い、夏川清翔をいじめるなと言い、継母を敬えと言った。

もう長い間、誰からも、「信じている」と言われたことはなかった。

なのに今、それを口にしてくれたのが、ただの他人である神崎卓礼だったなんて。

はっ、笑い話だ。

見ず知らずの人でさえ彼女の言葉を信じてくれるのに、肉親は信じず、幼なじみの恋人は真相を知りながらも本当の加害者を助けて彼女を陥れようとした。

前世の自分は、なんて哀れだったのだろう。

神崎卓礼の何気ない信頼の一言が、道乃漫の胸の奥に、じんわりと温かい火を灯した。そのぬくもりは、肌を伝って、彼に触れられている部分までも熱を帯びさせる。心臓は高鳴りすぎて、まるで今にも破裂しそうだった。

突如鳴り響いた携帯の着信音が、道乃漫の意識を現実へと引き戻した。

「出ないのか?」神崎卓礼はそう言いながらも、その手は彼女の体の上で大胆に動いていた。

さっきまで道乃漫は考え事をしていたので気づかなかったが、今見下ろすと、神崎卓礼の手は、いつの間にか彼女の胸に。