012 でもその加藤さんの座も、道乃琪が道乃漫から奪ったもの

誰かが何を言ったのか分からないが、道乃啓元は大笑いした。

笑い終わると、道乃啓元は感慨深げに加藤正柏に言った。「正柏、私の娘を君に託すよ。必ず大切にしてやってくれ。彼女は多くの辛い思いをしてきたんだ。」

「お父さん、ご安心ください。必ず大切にします。」加藤正柏は真剣に答えた。

道乃漫は加藤正柏と道乃琪の薬指に結婚指輪が光っているのを見た。

彼女が刑務所にいる間に、二人は待ちきれずに結婚していたのだ。

「ある事を、お前はずっと知らなかった。私と義母、そして琪だけが知っていたことだ。でも刑務所のあの件があって、私たちはずっと公にできなかった。そのせいで、琪は長年辛い思いをしてきた。」道乃啓元はため息をつきながら言った。

「お父さん。」道乃琪は目に涙を浮かべた。「辛くなんてありません。お父さんは私に良くしてくれました。私はそんな名目なんて気にしていません。」