038 人の心は汚く、口は悪い

道乃啓元の顔色が更に悪くなった。夏川清翔の一言一言が、彼の心に突き刺さった。

「そんなに良くないことだと分かっているのに、なぜずっとそうしているの？」道乃漫は分かっていた。道乃啓元は彼女が道乃家での虐待について、あちこちで同情を買おうとしていると思っているのだと。

そんなことは、道乃漫は決してしない。

父親として、道乃啓元は娘の性格さえ理解していなかった。

道乃啓元の疑いに対して、道乃漫は少しも傷つかなかった。もう麻痺していた。

しかし別の角度から見れば、これほどまでに麻痺するには、どれほどの心の傷を負ったのだろうか？

だが道乃啓元は全く知らなかった。

「安心して、道乃漫は家のことを外で話したことなんて一度もありません」道乃漫は言わなかったが、武田志贵は見過ごせなかった。「彼女と夏川さんの普段の会話を聞いていれば分かります。はっ、やったことがあるなら、人に言われるのを恐れることはないでしょう」