「まだです」と夏川清未は首を振った。
道乃漫は急いで夏川清未にスープを注ぎ、まず魚のスープを一杯飲ませてお腹を満たしてから、おかゆを盛り、おかずを並べて、夏川清未に食べさせた。
隣のベッドの患者は朝食の香りを嗅ぎ、食欲をそそられた。「本当に美味しそう。病院の食堂のものよりずっと美味しそうね」
夏川清未は二人部屋に入院していた。個室は道乃漫の経済状況では賄えなかった。
それに、同室の患者がいるのも悪くなかった。万が一、夏川清未が具合が悪くなった時に、自分がいなくても、少なくとも同室の患者が見守ってくれる、お互いに面倒を見合えるから。
道乃漫は尋ねた。「柴田叔母さん、朝ご飯は食べましたか?」
「食べたわ、食べたわ」柴田叔母は慌てて言った。食欲はあったが、人の食べ物をねだるのは気が引けた。