道乃漫は感謝の表情を浮かべ、「本当にありがとうございます。ご迷惑をおかけしてしまって」と言った。
看護師は、実の父親と継母にあんなにひどい目に遭わされている彼女が可哀想なのに、まだ病院に迷惑をかけることを心配している姿を見て、道乃漫の境遇の厳しさを痛感した。
ただ、道乃漫の家庭の事情には介入できない。自分にできる範囲で、できる限り助けてあげようと思った。
「大丈夫ですよ。あの人が来て騒ぎ立てたら、他の患者さんの安静の妨げになりますから」と看護師は言った。
道乃啓元はそれを聞いて、激怒した。
自分のことを何だと思っているんだ!
しかし周村成辉に制止されて、一言も発することができなかった。
道乃漫は、周村成辉と篠崎汇人が道乃啓元を病院の玄関から追い出すのを目の当たりにした。道乃啓元は非常に惨めな姿で、髪は乱れ、服もしわくちゃになっていて、誰が見ても大企業の社長とは思えないような有様だった。
道乃啓元は道乃漫を指差して罵りたかったが、体面を保ちたかったので、人通りの多い通りでそんなことはできなかった。
道乃漫も彼のことは放っておき、すぐに病院に戻った。
病室に戻ると、ちょうど看護師が夏川清未の傷の確認を終えたところだった。
道乃漫が戻ってきたのを見て、安心させるように「傷は大丈夫です、順調ですよ」と伝えた。
そして、夏川清未に向かって言った。「感情をコントロールしないといけませんよ。どんなに腹が立っても、自分の体を粗末にしてはいけません。体は自分のものなんですから、誰かのために自分を傷つけても何の得もありませんし、お嬢さんまで心配させることになります」
夏川清未は頷いて、「分かっています。今回は私が軽率でした」と答えた。
「本当にありがとうございます」と道乃漫は感謝の言葉を述べた。
「どういたしまして」看護師は本当に道乃漫という若い娘が大変だと思った。とても若く見えるが、先日道乃啓元が人を連れて騒ぎに来た時、夏川清未から聞いた話では、あの継娘のために道乃漫に強制的に休学させたという。
道乃漫には何も言わなかったが、同僚たちにこの状況を話して回った。