156 彼女は永遠に私の敵にはなれない

「道乃漫」大澤依乃は笑顔で彼女を引き止めた。「あなたの企画書はどうなの?通過する自信ある?」

「念のため、二つの企画書を用意したの。一つはパソコンに保存してあって、私が一番気に入ってるやつ。もう一つは先ほど提出した初稿よ。一番気に入ってた方は見つからなくなってしまったから、仕方なく、次善の策として、もう一つの方を使うしかなかったわ」道乃漫は気が乗らない様子で、明らかに先ほど提出した企画書に満足していなかった。

大澤依乃の目が輝いた。「つまり、パソコンにあった企画書は、先ほど提出したものとは違うってこと?」

道乃漫は何も答えなかったが、大澤依乃はそれを肯定と受け取った。

すぐに安堵のため息をついた。

葉月星は、道乃漫が大澤依乃と話している間に、ウイルスの入ったUSBメモリを取り戻そうとした。

しかし道乃漫は話し終わるとすぐに振り向き、USBメモリを手に取った。

葉月星は目を丸くして、「道乃漫、そのUSBメモリはあなたのものじゃないのに、なぜ持っていくの?」

「じゃあ、これはあなたの?」道乃漫は目を細めて尋ねた。

「もちろん違うわ」葉月星は急いで否定した。

「なら、私が持っていこうが何の問題があるの?」道乃漫は反問し、USBメモリをバッグに入れた。

「でも、それはあなたのものでもないでしょう」葉月星は呆然とした。

大澤依乃は心の中で馬鹿と罵った。葉月星はまるで、このUSBメモリが自分と関係があることを皆に悟られたいかのようだった。

「星はきっと、このUSBメモリがどうなっているのか調べてあげたかったんでしょう」大澤依乃は急いで言った。

「そう、そうよ!」葉月星は我に返り、慌てて取り繕った。「私、この分野に詳しい人を知ってるから、調べてあげようと思って」

「結構よ。私もそういう人を知ってるから、自分で調べるわ」道乃漫は彼女を深く見つめた。「結局、これは私のパソコンに差し込まれていたものだから」

実際、道乃漫はまったく調べるつもりはなかった。

調べる必要なんてあるだろうか?

中身はウイルスで、彼女のパソコンのファイルを破壊できるものだ。

大澤依乃の反応を見ると、おそらくファイルを自動的に転送することもできるのだろう。大澤依乃のところに送られているかもしれない。