道乃漫は鍵を取り出し、大澤依乃の目の前で事務机の引き出しを開け、前もって用意していた書類を取り出して武田立则に渡した。
柳田姉たちはようやく信じた。道乃漫がタスクを完了できないからといって、わざと自分のパソコンにウイルスを仕掛けたわけではないと。
道乃漫はすでに企画書を用意していて、パソコンに保存されていたのは最終的な修正と推敲のためだけだった。バカじゃない限り、わざわざ自分のパソコンにウイルスを仕掛けて、審査に通らないようにするはずがない。
彼女たちは最初、道乃漫が負けを認めたくないだけだと思っていたが、今や企画書が武田立则の手に渡った以上、疑う余地はなくなった。
柳田姉は大澤依乃を見て、そして葉月星と夏川夢璃を見た。
道乃漫が自分のパソコンにウイルスを仕掛けたのでなければ、誰かが仕掛けたということだ。
さっきまで、この三人が一番騒いでいて、大澤依乃の先ほどの発言を考え合わせると、柳田姉は心の中で推測を立てた。
もし大澤依乃が道乃漫のパソコンにウイルスを仕掛けたのなら、すべての辻褄が合う。
そして今、大澤依乃は他人が何を考えているかなど気にする余裕はなかった。
さっきまで道乃漫が企画書を提出できないと思い込んでいたため、早く事を決着させようと、すでに書類を武田立则に渡してしまっていた。
もし神崎卓礼に、彼女と道乃漫の企画書が同じだと気付かれたら……
大澤依乃は口角を引きつらせながら、無理に笑みを作って言った。「道乃漫の企画書が完全に準備できていないなら、明日提出するのはどうでしょう。さっき武田部長も、明朝まで延期しても問題ないとおっしゃっていましたよね?」
大澤依乃はそう言いながら、先ほど提出したばかりの書類を取り戻そうとした。
手を伸ばした瞬間、手首を道乃漫に掴まれた。
「何をするの?」大澤依乃は不快そうに彼女を見た。
「さっきまで延期は不可能で、そうすれば私に不公平だって言っていたじゃない?どうして今になって私のことを考えてくれるの?」道乃漫は眉を上げた。
大澤依乃は言葉に詰まり、また笑って言った。「さっきは、あなたが企画書を考えていなくて、わざと引き延ばしているんだと誤解していたの。でも今、あなたがすでに準備していて、最後の修正と推敲だけが残っているとわかったから、そのくらいの時間は与えてもいいと思って。」