180 やっと恋人ができたの？

「車の中で話そう」道乃啓元も今は腹が立っていたが、外では多くを語れなかった。

ところが、彼らがホテルを出るや否や、大勢の記者たちが取り囲んできた。

「道乃琪さん、パーティーはまだ始まっていないのに、なぜ出てきたんですか？」

「内部の人間から聞いたんですが、今夜はあなたは招待リストに入っていなかったそうですね？」

「道乃琪さん、コメントをお願いします」

「何をしているんですか、どいてください！どいて！」夏川清翔は道乃琪のために長いカメラを遮った。

しかし、記者があまりにも多く、彼女一人では防ぎきれず、多くのカメラレンズが道乃琪の顔に向けられた。

道乃琪は額や顎を何度も打たれた。

「どいてください、警備員はどこですか？」道乃琪も焦り、体裁を保つ余裕もなくなった。

これらの記者たちはどうしてこんなに早く知ったのだろう！

「蒼井姉、外で道乃琪たち三人が記者に囲まれているんですが、私たちは——」

「必要ない」蒼井維真は冷たい表情で言った。「彼らは私たちの助けなど望んでいないわ」

さっき夏川清翔があんなに傲慢だったじゃない、何て言ってたっけ？

私なんか小さな編集長で、道乃家には敵わないって？

そんなに偉そうなら、助ける必要なんてないでしょう！

蒼井維真は南條景衡に報告に行った。

南條景衡は神崎卓礼に電話をかけた。「卓兄、追い払いましたよ。今どこにいるんですか？」

「追い払えたならそれでいい」神崎卓礼は二言も言わずに電話を切った。

「……」南條景衡は呆れて携帯を見つめた。「はぁ、この兄貴たちときたら、みんな恩を仇で返すんだな！」

南條景衡は思い出した。さっき神崎卓礼は何て言ってたっけ？

確かトイレの方にいるって言ってたよな。

南條景衡は立ち上がってトイレに向かった。

***

神崎卓礼は道乃漫の手首を持ち上げ、そこに付いた赤い指の跡を見て、全身から殺気を放った。

「さっきあいつを殴り足りなかったな！」神崎卓礼は低い声で言った。

「大丈夫よ、見た目ほど酷くないし、そんなに痛くないわ」彼女は単に跡が付きやすい肌質なだけだった。

神崎卓礼は唇を引き締め、非常に不満そうだった。

「後で私と一緒に座るんだ」彼の大切な人を誰かが軽く見ているとでも思っているのか。