300 強がりで心は優しい

「大婆様は面白い人だと思う」偽装しようとしても、いつもばれてしまい、ばれたらすぐに取り繕おうとする様子を、今思い出しても笑ってしまう。

「大婆様は帰ってから、君に対する態度が明らかに以前ほど拒否的ではなくなった。君を受け入れたけど、素直に認めたくないだけだ」神崎卓礼は笑いながら言った。

道乃漫はとっくに気づいていた。神崎大婆様は口は固いが心は優しい人なのだと。

朝食を済ませると、神崎卓礼は道乃漫を撮影現場まで送った。

入り口で停車し、神崎卓礼は中に入らなかった。

中には高木武一のような知り合いだけでなく、白泽霜乃のような人もいて、神崎卓礼は関わりたくなかった。

道乃漫も同じことを考えていて、神崎卓礼が入る気配がないのを見て、それが一番良いと思った。

「じゃあ、行ってくるね。今日は撮影シーンが少ないから、早く帰れると思う」道乃漫は神崎卓礼を見ながら言った。彼に送ってもらうのは本当に気持ちがいい。