351 あなたは運がいい

しかし白石诺乃は、道乃漫がとっくに大婆様の正体を見抜いていたように感じていた。

神崎卓礼があれほど妻に何でも話してしまう性格なのだから、道乃漫が大婆様の身分を知らないはずがないだろう?

この点において、神崎卓礼は父親にそっくりだった。

白石诺乃は、道乃漫が大婆様の芝居に付き合っているだけだと思った。

大婆様だけが、まだ上手く隠せていると思い込んでいた。「まあ、なんて偶然でしょう!ちょうど私たち二人でアドバイスができますわ」

大婆様は道乃漫を見回して、「あなた、若いのにファッションセンスがあまりよくないわね」

道乃漫は今日シンプルな格好で、ダウンジャケットにジーンズという、これ以上ない普通の姿だった。

実は大婆様は店員が見た目で差別するのではないかと心配で、道乃漫が普通の服装をしているため軽く扱われるのではと思い、「私とお義姉さんで頑張って選んであげましょう」

道乃漫はそれを聞いても怒らず、笑いを堪えながら素直に頷いた。「ありがとうございます。大奥様とお義姉様にご迷惑をおかけしてしまいます」

「ふふ、確かに面倒ね」大婆様は鼻を鳴らして、「今日あなたに会えたのは、あなたの運がいいからよ」

大婆様が道乃漫を隣の高級ブランド店に連れて行こうとすると、道乃漫は慌てて大婆様を引き止めた。「大奥様、私はそちらではなく、こちらで買い物をしたいんです」

道乃漫は隣のカジュアルラグジュアリーブランドの店を指さした。そこの価格なら、出演料を使わなくても、給料だけで賄えるものだった。

大婆様はそれを見て言った。「どうしてあちらの店に行かないの?あそこの服はとても素敵よ」

道乃漫は首を振った。「あそこの服は高すぎて、私には手が出ません」

大婆様はそんな返事を予想していなかったため、少し驚いたが、すぐに気にしない様子で笑った。「あなたの彼氏はすごく優秀じゃない?彼のお金を使えばいいのよ。彼女に服を買ってあげるなんて、当たり前のことじゃない。彼のために節約する必要なんてないわ」

まるで自分の孫のことではないかのように話す大婆様は、神崎卓礼に対して全く遠慮がなかった。